アニメ『進撃の巨人』第22話「敗者達」の場面に触れます。ネタバレを含みます。
リヴァイの戦闘場面でいちばん好きなところを聞くと、動きの速さを挙げる人が多くいます。ただ、この回で胸をつかまれた人の多くは、速さそのものではなく、その前の一つの判断を覚えています。
倒せるかもしれない相手を前にして、倒さないと決めた判断です。
連れ去られたエレンを追うミカサに、リヴァイが追いつきます。正体を隠した巨人を前にして、リヴァイは仕留めることをあきらめ、エレンを取り戻すことだけに目的を絞りました。
この判断は、勝ち目がなかったから下されたものではありません。実際に彼は、そのあと巨人の動きを止めるところまで持ち込んでいます。勝てるかどうかより先に、何を持ち帰るかを決めた。目的を一つに削ったからこそ、あの速さが出たとも言えます。
多くの仲間を失った直後です。仇を討ちたい気持ちが、誰より強くても不思議ではありません。
それでもリヴァイは、取りたいものを全部は取りに行きませんでした。欲しいものを一つに絞るのは、欲しいものを全部追うより、ずっと苦しい。手放したほうのことを、あとで何度も考えることになるからです。この人が冷静に見えるのは、感情がないからではなく、手放す痛みを先に引き受けているからです。
動きを止めた巨人に、ミカサは止めを刺そうと飛び込みます。エレンを奪われた怒りが、そのまま刃に乗っていました。
リヴァイはその反撃から彼女をかばい、自分の足を痛めます。自分が決めた目的に、他人の怒りを巻き込ませなかった。ここでミカサまで失えば、取り戻したいものは一つから二つに増えてしまいます。かばったのは情けではなく、目的を守るための判断の続きでした。
ミカサの突撃は、判断としては危ういものでした。それでもリヴァイは、彼女の怒りそのものを否定する言葉を選んでいません。
怒っている人を止めるとき、たいていの人は理屈で説得しようとします。でもこの場面のリヴァイは、まず体で止め、その代償を自分が払いました。正しさを言う前に、相手が無事でいる状態を先に作る。説教はそのあとでもできますが、失った人は戻ってきません。
この回の最後、壁の中に戻った調査兵団を待っていたのは、称賛ではなく、多くの犠牲に向けられた冷たい目でした。回のタイトルは「敗者達」です。
リヴァイも、勝った人として描かれてはいません。それでも、手放さなかったものが一つあります。取り戻すと決めたエレンを、傷を負ったまま持ち帰ったこと。敗者の側に立ちながら、自分で決めた目的だけは最後まで落とさなかった。この回のリヴァイが好きだと言う人は、たぶんその一点を見ています。
同じ回を見ても、残る一点は分かれます。
仕留めることをあきらめた判断。目的を一つに削ったあとの速さ。ミカサをかばって負った傷。「敗者達」というタイトル。——どこで息が止まったかは、見た人ごとに違います。
分かれ目は、強いキャラが好きかどうかではありません。全部を取りに行く人と、一つを確実に持ち帰る人、どちらに自分を重ねるか——そこに近いところです。
浮かぶ場面がひとつあれば、それで足ります。
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