アニメ『進撃の巨人』第15話「特別作戦班」の場面に触れます。ネタバレを含みます。
進撃の巨人で好きなキャラを聞くと、ハンジ・ゾエの名前は思った以上によく挙がります。最初に強く印象に残るのは、捕らえた巨人の実験について、エレンに語って聞かせる場面です。
変わり者として笑って見た人もいれば、なぜか目が離せなかった人もいます。目が離せなかった人のほうに、少し付き合ってみます。
エレンがリヴァイ班に加わったあと、調査兵団のハンジは、トロスト区の戦いで生け捕りにした巨人の実験について、エレンに話して聞かせます。多くの人が巨人に命を奪われてきた世界で、ハンジは巨人のことを、目を輝かせて語ります。
この場面は、ハンジの変人ぶりを示す見せ場として扱われがちです。でも、その世界で巨人がどういう存在だったかを考えると、別の読み方もできます。誰もが目を背けたいものを、ハンジだけは正面から見ようとしていた、という見方です。
人は、正体の分からないものをいちばん怖がります。壁の中の人々にとって、巨人はまさにそれでした。なぜ人を食べるのか、どうすれば止まるのか。誰も答えを持っていません。
怖いものから距離を取るのは、自然な身の守り方です。ハンジはその逆を選びます。近づいて、測って、記録する。恐怖を消すのではなく、恐怖の正体を少しずつ小さく切り分けていく。楽しそうに見えるのは、それが前に進む唯一の方法だと知っている人の顔だからかもしれません。
この話を聞かされたのは、巨人の力を持つことが分かったばかりの少年でした。周りの多くがエレンを恐れ、見張っている時期です。
ハンジはエレンに、巨人について知っていることを、同じ調査の仲間に話すように語ります。恐れる相手ではなく、一緒に知りたい相手として扱った。エレン自身がまだ自分のことを分かっていない時期に、それは小さくない迎え方でした。
ハンジの語りは、興奮しているように見えます。けれど中身は、観察の積み重ねです。何を試し、何が起きたか。思いつきではなく、手順の話をしています。
熱く語る人ほど、細かいところを見ていることがあります。好きなものについては、ほかの人が見落とす小さな違いまで覚えているからです。笑って見ていた場面の中に、調査兵団が巨人に勝つための、いちばん地道な仕事が映っていました。
同じ場面でも、残る一点は人によって違います。
巨人を目を輝かせて語る顔。怖いものに近づいていく足取り。聞き手にエレンを選んだこと。熱の中にある手順。——笑った場面の中に、引っかかる一点が混ざっていたはずです。
分かれ目は、好奇心が強いかどうかではありません。怖いものから離れて落ち着く人か、近づいて確かめて落ち着く人か——そこに近いところです。
覚えている場面がひとつあれば、それで十分です。
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