アルミンは、エルヴィンをかばった

アニメ『進撃の巨人』第20話「エルヴィン・スミス」の場面に触れます。ネタバレを含みます。

進撃の巨人で心を動かされた場面を聞くと、正体を隠した巨人をめぐる編を挙げる人が多くいます。ただ、同じ編を挙げた人でも、止まった一点はそれぞれ違います。

巨人との攻防よりも、そのあとの静かなやり取りが、いつまでも頭に残っている人がいます。

頭がいいから、かばったのではない

巨大樹の森での作戦のあと、多くの兵士を失った代償について、エレンはエルヴィン団長を責めます。アルミンはその場で、団長の判断を弁護します。この場面は、頭の回転が速いアルミンが正論で相手を丸め込んだ場面として語られがちです。

でも彼の言葉をたどると、正しさを証明するための弁護ではないと分かります。アルミンが説明していたのは、誰か一人が決断する立場に立ったとき、何を手放さなければならないかという仕組みそのものです。頭の良さは、その仕組みを言葉にする道具として使われているだけで、かばう理由そのものは別のところにあります。

頭がいいという評価は、この人物をいつも少し遠ざけて見せます。感情を抜きにして物を考えられる、冷たいくらい合理的な人、という距離の取り方です。でもこの場面のアルミンがしていたのは、距離を取ることではありません。エルヴィンの立場に、自分の想像を重ねて入り込み、そこから見える景色を代わりに言葉にしていただけです。合理性は結果であって、出発点ではありませんでした。

声より先に、手が震えていた

このときのアルミンの様子をよく見ると、声は落ち着いているのに、手のほうは震えています。言葉を整えることと、体が受けている衝撃は、別々に進んでいました。

冷静に話せていたのではなく、震える体を言葉で押さえ込んでいた、と見るほうが近いかもしれません。多くの仲間が命を落とした事実は、アルミンにとっても軽いものではありません。それでも彼は、その重さを脇に置かず、抱えたまま話し続けました。冷静さは彼の性質ではなく、その場で選び取った態度でした。

震える手を、彼は隠そうとしていません。ポケットに入れるでもなく、握りしめるでもなく、そのままの状態で言葉を続けています。隠さなかったのは、隠す余裕がなかったからというより、隠すこと自体に意味を感じていなかったからかもしれません。震えは弱さの証拠ではなく、彼が本気で考えている最中だという、いちばん正直な合図でした。

壁の外を描いた一冊の本が、二人の役割を決めていた

アルミンとエレンの関係を語るとき、いつも中心にあるのは、子どものころにアルミンが持っていた一冊の本です。壁の外の世界について書かれた、禁じられた本でした。

あの本を読んで外の世界に憧れたのはアルミンで、その話を隣で聞いていたのがエレンです。動く人間と、考える人間という二人の役割は、あの本を挟んだ時間の中で既に決まっていました。今回、エレンが感情のままに動こうとするのを止めたのも、同じ役割の続きです。アルミンが担っていたのは、あの本を読んでいたころから変わらない持ち場でした。

あの本を開いていたころ、外の世界について語っていたのはいつもアルミンで、聞いていたのはエレンとミカサでした。知識を差し出す側と、受け取って動く側、という関係は、壁の中の子ども時代からずっと変わっていません。今回、団長の判断について説明しているのも、同じ構図の延長です。彼が変わったのではなく、同じ役目が、より重い場面で繰り返されているだけでした。

エレンが黙ったのは、納得したからではない

エレンにとって、アルミンの冷静な説明は、最初は苛立ちの対象に見えます。仲間が死んだ直後に、なぜ理屈の話ができるのか、と。

でもエレンの側の歴史をたどると、違う姿が見えてきます。考えることを、エレンは昔からアルミンに任せてきました。自分は前に出て戦う、判断はアルミンに預ける。この役割分担は、子どものころからずっと続いています。苛立ちの下にあったのは、任せてきた相手に、今回だけは頼りたくないという、めずらしい意地でした。だから彼が黙ったのは、正論に屈したからではありません。

「臆病者」と呼ばれた過去は、弱さの証明ではなかった

幼いころのアルミンは、体が小さく、力も弱く、周りから「臆病者」と呼ばれていました。この呼び名は、長いあいだ彼の弱点を示す言葉として扱われてきます。

でも今回のような場面を見ると、その意味が変わって見えます。臆病だったからこそ、アルミンは危険を先に想像する癖を身につけていました。怖がる力は、逃げるための力ではなく、状況を先読みするための力に変わっています。弱さとして貼られた呼び名が、今は彼にしかできない役割の土台になっていました。

震えが消えたから、強くなったのではない

この場面のあと、アルミンが恐れを克服して強くなる、というふうに受け取る人もいます。でも実際の彼は、震えたまま話し終えています。

震えが止まったから話せたのではなく、震えたまま話す方法を見つけただけです。恐れがなくなったわけでも、仲間の死を割り切れたわけでもありません。彼はただ、恐れを抱えたまま次の判断に進む方法を、この場面で一度使っただけでした。

あなたが止まったのは、どこでしたか

同じ場面を見ても、記憶に残る一点は分かれます。

震えていた手。壁の外の本を挟んだ二人の役割。「臆病者」と呼ばれた過去の裏側。エレンが黙ってしまったこと。——どこで立ち止まるかは、読む人ごとに変わります。

分かれ目は、キャラクターへの好みではありません。恐れを言葉に変えられる人かどうか、その一点に近いところにあります。

覚えている場面が一つあれば、それで足ります。

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<!--裏取り: 進撃の巨人 / https://shingeki.tv/season1/story/episode_19.php / 第19話「噛みつく」-->

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そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。

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