未来から来たトランクスは、正体を悟空にだけ明かした

人造人間・セル編(トランクス初登場)の場面に触れます。ネタバレを含みます。

ドラゴンボールで心が動いた場面を聞くと、名前も知らない青年が現れた、あの登場を挙げる人がいます。ただ、同じ登場を挙げた人でも、止まった位置は同じではありません。

剣を抜いた瞬間で止まる人もいれば、そのあと、悟空と二人きりになって打ち明けたところで止まる人もいます。

強さを見せに来たのではない

トランクスは、地球に来たフリーザを一人で倒し、悟空の到着を待ちます。皆が驚き、誰なのかと身構える。ここはよく「かっこいい登場の場面」として語られます。

けれど、彼が本当にしに来たことは、戦いのあとにあります。強さを見せることではなく、話をすることです。戦いは、その話を聞いてもらうための、名刺のようなものでした。

話したのは、一人にだけだった

トランクスは、悟空と二人きりになってから、自分が未来から来たこと、これから起こること、そして自分が誰の子どもかを打ち明けます。そして、それを皆には言わないでほしいと頼みます。

大事なことを、全員にではなく一人にだけ話す。 話す相手を選ぶのは、信頼のしるしでもあり、背負わせることでもあります。トランクスは、それを分かったうえで悟空を選んだように見えます。彼の未来では、もう会えない人だったからです。

父の顔を、知らないまま来た

トランクスの父はベジータです。けれど、彼がいた未来では、父は彼がまだ幼いうちに亡くなっていました。過去に来て初めて、彼は父の顔をちゃんと見ることになります。

その父は、息子だと知らずに、無愛想に横を向いている。自分のことを知らない親を、知っている子どもの側から見る。名乗れない近さというものが、この登場の場面には最初から入っています。

悟空の側から見ると、これは受け取るしかない話だった

悟空は、目の前の青年に未来のことを告げられ、薬まで渡されます。疑う理由はいくらでもありました。けれど悟空は、聞いて、受け取ります。

信じたというより、受け取ったのだと思います。相手が何を背負ってここまで来たかを、悟空は話の中身より先に、顔のほうで見ていた。この場面で止まる人の中には、打ち明けたトランクスより、黙って受け取った悟空のほうに目が行く人もいるはずです。

希望を運んできた人が、いちばん希望を持っていなかった

トランクスの未来は、人造人間に壊された世界です。彼は、その世界に残った最後の戦士として、過去に手を伸ばしに来ました。

希望を運んでくる人は、自分の手元に希望がないから運んでくるのだと読めます。過去の人たちに渡したものは、彼が自分の時代では持てなかったものでした。あの爽やかな登場の裏には、それだけの不足があります。

あなたが止まったのは、どこでしたか

同じトランクスの登場を思い出しても、残っている一点は人によって違います。

剣を抜いた瞬間で止まる人。悟空と二人きりになって打ち明けたところで止まる人。父だと知りながら、ベジータを遠くから見ていた目で止まる人。薬を渡したときの、少しほっとした顔で止まる人。

作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。

この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。

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