テレビシリーズ第4話(さやかが上条の病室を訪ねる場面)の場面に触れます。ネタバレを含みます。
魔法少女まどか☆マギカで心が動いた場面を聞くと、さやかが幼なじみの上条恭介の病室を訪ねる場面を挙げる人がいます。ただ、同じ場面を挙げた人でも、止まった位置は同じではありません。
上条が声を荒らげたところで止まる人もいれば、それでも帰らなかったさやかの顔で止まる人もいます。
上条は、けがで手が動かなくなったバイオリン弾きです。さやかは、彼の好きな音楽のCDを持って、何度も病室に通います。ここはよく「さやかの一途さが出た場面」として語られます。
けれど、さやかがしていたのは、ただの世話焼きではありませんでした。相手がいちばん失いたくなかったものを、自分も一緒に失わずにいようとしていたのです。音楽を持って行くのは、彼の側に音楽がまだあると言い続けることでした。それが、相手を傷つける側に回ることもあると知らないまま。
ある日、上条は、さやかが持ってきた音楽に耐えられなくなり、声を荒らげます。さやかは、それを正面から受けることになります。
本当に怒りが向いていたのは、さやかではなく、動かない自分の手のほうでした。 けれど、怒りはいちばん近くにいる人に届きます。この場面で胸がつまる人の多くは、怒られたさやかよりも、怒ることでしか苦しさを出せなかった上条の側に、覚えがあるのかもしれません。
どんな願いでも一つ叶う。まどかがずっと迷っていたその問いに、さやかは、自分のためではない答えを出します。動かなくなった上条の手のことです。
自分の願いを、人のために使う。 立派に見える選び方です。けれど、自分の欲しいものを先に言えない人は、人の欲しいものを自分の願いの代わりにすることがあります。この場面でさやかに止まる人は、その選び方の美しさと、どこか危うい感じの両方を見ています。
同じ病室の場面を思い出しても、残っている一点は人によって違います。
CDを持って通うさやかの足どりで止まる人。声を荒らげた上条で止まる人。怒鳴られても帰らなかったさやかの顔で止まる人。願いを自分のために使わなかった、その一瞬で止まる人。
作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。
この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。
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