第1話(王都の大聖堂で行われた勇者ヒンメルの葬儀で、フリーレンが涙をこぼす場面)の場面に触れます。ネタバレを含みます。
葬送のフリーレンの第1話で、勇者ヒンメルは年老いて亡くなります。その葬儀の最中に、フリーレンは涙をこぼします。人間の寿命が短いと分かっていたのに、なぜもっと知ろうとしなかったのか、と。この場面を覚えている人でも、止まった位置は同じではありません。
涙そのもので止まる人もいれば、泣くまでのフリーレンの淡々とした顔のほうで止まる人もいます。
この場面はよく「仲間の死を悼む涙」として語られます。葬儀の場面ですから、そう見えるのは自然です。
けれど、フリーレンが泣いたのは、失ったものの大きさより、自分がそれを大きいと思っていなかったことに気づいたからでした。10年は、彼女にとって短い時間でした。短いと思っていたから、相手を知ることを後回しにしていた。この場面に止まる人は、いなくなってから「もっと聞いておけばよかった」と思った誰かに、覚えがあるのかもしれません。
葬儀が始まるまで、フリーレンはいつもと変わらない顔をしています。周りが悲しんでいるあいだも、彼女はまだ悲しみの形をつかめていません。
大事なものを失ったとき、すぐには泣けず、しばらくたってから急に崩れる人がいます。 冷たいからではなく、気持ちが追いつくのに時間がかかるだけです。この場面で胸が動く人は、自分の涙がいつも少し遅れて来ることを、知っている人かもしれません。
フリーレンは、この葬儀のあとで、人間を知るための旅に出ます。取り戻せないものを取り戻すためではなく、次に同じ後悔をしないための旅です。
後悔で終わる話ではなく、後悔から始まる話だということ。この始まりに止まる人は、遅すぎたと分かったあとでも、そこから歩き直してきた人です。
同じ葬儀の場面を思い出しても、残っている一点は人によって違います。
こぼれた涙で止まる人。泣く直前まで変わらなかった顔で止まる人。「もっと知ろうと思わなかった」という後悔の言葉で止まる人。周りで見ていた仲間の表情で止まる人。
作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。
この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。
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