映画の後半(大人しくなったカオナシが、千尋たちと一緒に電車で銭婆のもとへ向かう場面。道中の範囲)の場面に触れます。ネタバレを含みます。
千と千尋の神隠しの後半、千尋は切符をもらって電車に乗り、銭婆のもとへ向かいます。その隣には、大人しくなったカオナシが座っています。砂金を出すこともなく、ただ黙って一緒に揺られています。
この場面を挙げる人でも、止まった位置は同じではありません。窓の外の水の景色で止まる人もいれば、並んで座る二人の静けさで止まる人もいます。
この場面はよく「映画でいちばん静かで美しい場面」として語られます。映像の印象としては、その通りです。
けれど、カオナシには、その電車で行きたい場所があったわけではありません。どこへ行くかより、誰と一緒にいるかで、ついて行くことを選んでいます。 この場面に止まる人は、行き先より隣にいる人で道を決めた覚えがあるのかもしれません。
油屋では、カオナシは砂金を出して人を集めていました。電車の中では、何も出していません。それでも千尋の隣に座っています。
何かを差し出さなくても、そこに居ていいと分かったとき、人はやっと静かになれます。 この場面で胸が動く人は、景色の美しさより、何もしなくていい隣のほうに目が行く人です。
電車の中で、二人はほとんど話しません。窓の外を見て、駅に着くのを待っています。
黙って同じ方向へ運ばれていく時間が、言葉よりも関係を作ることがあります。 この場面に止まる人は、誰かと黙って並んでいられた時間を、特別なものとして覚えている人です。
同じ場面を思い出しても、残っている一点は人によって違います。
水の上を走る電車の景色で止まる人。黙って座るカオナシの背中で止まる人。隣に座らせた千尋の決め方で止まる人。何も差し出さずにいられた静けさで止まる人。
作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。
この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。
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