第1期(8・3抗争)の場面に触れます。ネタバレを含みます。
東京リベンジャーズで心が動いた場面を聞くと、8・3抗争の雨の夜を挙げる人がたくさんいます。ただ、同じ夜を挙げた人でも、止まった位置は同じではありません。
ドラケンが倒れたところで止まる人もいれば、そのあと、ぼろぼろのタケミチが立ち上がったところで止まる人もいます。
タケミチは、喧嘩が強くありません。殴られて倒れる場面のほうが、殴る場面よりずっと多い。その人が、深い傷を負ったドラケンを守るために、自分より強い相手の前に立ち、そのあとドラケンを背負って雨の中を歩き出す。ここはよく「タケミチが強くなった場面」として語られます。
けれど、あの夜の彼は強くなっていません。足はふらつき、顔は腫れ、何度も膝をつきます。変わったのは強さではなく、倒れたあとに立つまでの時間の短さです。誰かを背負っているあいだは、倒れたままでいる理由がない。
背負われているドラケンは、東卍の副総長です。誰よりも大きな体で、誰よりも落ち着いている人。その人が、自分の傷のことより先に、総長のマイキーのことを気にかけています。
自分が倒れたら、誰がマイキーの隣に立つのか。 ドラケンがずっと引き受けてきたのは、腕っぷしの役ではなく、総長の心が危うくなったときに隣にいる役でした。背負われながらも、その役から降りていない。この場面でドラケンのほうに止まる人は、たぶんそこを見ています。
ふだん、ドラケンは人を支える側にいて、タケミチは支えられる側にいます。この夜だけ、それが逆になりました。いちばん頼りにならないと思われていた人が、いちばん頼りになる人を運んでいる。
背負われる経験の少ない人ほど、背負われることは怖いものです。体を預けるしかない時間に、ドラケンはたぶん、自分が人に預けられる側にもなれることを知った。この場面の重さは、雨の冷たさよりも、その入れ替わりのほうにあります。
同じ雨の夜を思い出しても、残っている一点は人によって違います。
ドラケンが倒れた瞬間で止まる人。タケミチが相手の前に立った足で止まる人。背負って歩き出した背中で止まる人。雨の中で叫ぶ声のほうで止まる人。そのあと、病院の前で待っている仲間たちのほうで止まる人。
作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。
この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。
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