弟のために、笑みを消した天才

都大会(聖ルドルフ戦。弟の裕太を勝つための道具として扱った観月と、不二が向き合う場面)の場面に触れます。ネタバレを含みます。

不二周助は、いつも穏やかに笑っていて、本気を見せない天才として描かれます。その不二が、聖ルドルフとの試合で、はっきりと笑みを消します。相手は、弟の裕太を勝つための道具として扱った観月です。ただ、この場面を思い出す人でも、止まった位置は同じではありません。

怒った不二の目で止まる人もいれば、兄と比べられ続けて家を出た裕太の側で止まる人もいます。

強かったから、怒ったのではない

ここはよく「天才が本気を出した名勝負」として語られます。試合の場面としては、そう見えるのが自然です。

けれど、この日の不二が見せたのは、強さより先に、怒りでした。自分が何を言われても笑っていられる人が、弟の扱われ方だけは笑って流せなかった。 この場面に止まる人は、技の鮮やかさより、ふだん崩さない顔が崩れる理由のほうに、覚えがあるのかもしれません。

比べられる弟の側から見ると

裕太は、天才の兄と比べられることに耐えられず、別の学校へ移った弟です。兄と同じコートに立たないことで、自分の名前を取り戻そうとしていました。

近い人を守りたいのに、近い人から距離を取られている。 兄弟、親子、昔からの友だち。この場面で胸が動く人は、守る側と離れたい側の両方を、どこかで生きてきた人です。

笑っている人は、何も感じていないわけではない

いつも笑っている人は、軽く見られがちです。何があっても平気な人、本気にならない人だと思われます。

笑みは、感じていないしるしではなく、感じたことを見せる場所を選んでいるしるしです。 だからこそ、その笑みが消える一瞬には、その人がいちばん大事にしているものが映ります。

あなたが止まったのは、どこでしたか

同じ試合を思い出しても、残っている一点は人によって違います。

笑みが消えた不二の顔で止まる人。兄と比べられてきた裕太で止まる人。観月の勝つための計算で止まる人。ベンチで試合を見守っていた青学の仲間たちで止まる人。

作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。

この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。

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