あかねは、髪を切られても笑ってみせた

第1期(乱馬と良牙の決闘)の場面に触れます。ネタバレを含みます。

らんま1/2で心が動いた場面を聞くと、あかねの長い髪が切れてしまう場面を挙げる人がいます。ただ、同じ場面を挙げた人でも、止まった位置は同じではありません。

髪が落ちた瞬間で止まる人もいれば、そのあと、あかねが平気な顔をしてみせたところで止まる人もいます。

強がったから、笑ったのではない

乱馬と良牙の決闘に巻き込まれて、あかねの長い髪が切れてしまう。巻き込んだ側の乱馬は、うろたえて言葉が出ません。あかねは、思っていたより平気そうな顔をしてみせる。ここはよく「あかねが強がった場面」として語られます。

けれど、あの顔はただの強がりではなかったように見えます。あかねが長い髪を伸ばしていたのには、自分の中だけの理由がありました。髪が切れたことで、その理由ごと手放せた——だから笑えた、と読むこともできます。失くしたものと、肩から下りたものが、同じ一瞬に重なっていた。

乱馬は、謝る言葉を持っていなかった

乱馬は、あかねに「かわいくない」と言い続けてきた人です。その人が、髪の短くなったあかねを前にして、いつもの憎まれ口を出せずにいる。

謝り慣れていない人は、謝る言葉から始められません。 黙るか、怒るか、別の話をするか。乱馬がこの場面で見せたのは、そのどれでもない、困った顔でした。この場面で乱馬のほうに止まる人は、言葉にならなかったその顔を見ています。

「かわいくない」という言葉の中身

乱馬とあかねは、親が決めた許嫁です。互いに「好きで決めたわけじゃない」という顔を崩しません。だから二人のあいだの言葉は、たいてい本音の反対側にあります。

髪の短くなったあかねに向けられた視線は、それまでの憎まれ口とは少し違っていました。言葉はいつもどおりでも、見ている目だけが変わっている。 騒がしい作品の中で、この場面が静かに覚えられているのは、その差がはっきり見えた数少ない瞬間だからかもしれません。

あなたが止まったのは、どこでしたか

同じ場面を思い出しても、残っている一点は人によって違います。

髪が落ちた瞬間で止まる人。あかねの平気そうな顔で止まる人。言葉の出ない乱馬で止まる人。短くなった髪のあかねが、少しだけ軽そうに見えたところで止まる人。

作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。

この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。

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