誰より早く来ていた先輩と、その先に来たかった1年生

第1話(朝練の体育館で、バドミントン部の大喜がバスケ部の千夏の練習を見ている場面。第1話の前提の範囲)の場面に触れます。ネタバレを含みます。

アオのハコの始まりは、朝の体育館です。バドミントン部の1年生・大喜は、毎朝、自分より先に来て練習しているバスケ部の先輩・千夏を見ています。ただ、この始まりの場面を思い出す人でも、止まった位置は同じではありません。

憧れの人を遠くから見ている時間で止まる人もいれば、その人より早く来ようと決めたことのほうで止まる人もいます。

好きだから、早く来たのではない

この場面はよく「一目惚れの始まり」として語られます。物語の始まりとしては、そう見えるのが自然です。

けれど、大喜が毎朝体育館に向かう理由は、千夏を見ることだけではありません。自分より先に来て、黙って練習を積んでいる人がいる。その事実が、自分の足りなさを毎朝見せてくるからです。この場面に止まる人は、恋のときめきより、追いつきたい背中が目の前にある感じのほうに、覚えがあるのかもしれません。

隣に立てる自分になる、という目標

千夏は、全国を目指すバスケ部のエースとして描かれます。大喜は、まだ何者でもない1年生です。

好きな人の隣に立ちたいとき、人は告白より先に、自分を変えに行くことがあります。 大喜がバドミントンでインターハイを目指すのは、そのためです。この場面で大喜の背中に止まる人は、欲しいものの手前で、まず自分の足りないところを埋めようとしてきた人です。

一つ屋根の下になっても、距離は縮まらない

第1話で、千夏は事情があって大喜の家で暮らすことになります。毎朝同じ家から出て、同じ体育館に向かう。近くなったはずなのに、近くにいるほど、気持ちは口に出せなくなります。

この場面で胸が動く人は、距離が近いことと、心が届くことは別だと知っている人です。

あなたが止まったのは、どこでしたか

同じ始まりの場面を思い出しても、残っている一点は人によって違います。

朝の体育館の静けさで止まる人。先に来ている先輩の背中で止まる人。追いつきたいと決めた大喜の顔で止まる人。同じ家に帰ることになった二人の距離で止まる人。

作品の評価が分かれているのではなく、ふだん何を見て生きている人かが分かれているだけです。 理由を説明する必要はありません。浮かんだ一場面が、そのままあなたの答えになります。

この場面で息を止めたということが、あなたの何を指しているか。
そこが分かれるところに、あなたの性格が出ます。

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